中国に買われる日本企業…
「脅威」それとも「救世主」?
場所は中国の香港。
その街角に見慣れた看板。
マクドナルドです。
その入り口の脇には大きな液晶ディスプレイが数台ならんでいます。
表示されているのは、マクドナルドのメニュー
自分で欲しいものを選んでいます。
支払いはスマホを機械にかざし、完了。
こうして支払いが出来るのは中国だけです。
利用者の声は、
「財布を持たなくていいし、スマートフォン一つあれば 簡単にオーダーできるから 便利でいいと思うわ」
「いちいちカウンターでメニューを眺める必要はないし 並ばなくていいから いいわ」
といった感じです。
この店を作ったのが
CITICキャピタルという投資会社のトップ、
チャン・イーチェン CEO
チャンさんは去年8月、アメリカのマクドナルドから
中国の経営権を買収しました。その額2440億円。
チャンさん曰く、
「従来のマクドナルドのやり方は 中国に合っていませんでした。」
スマホでの支払いが普及している中国、
それを活用して並ぶのが嫌いな中国人向けに
独自のシステムを作り上げました。
好きな野菜を入れてくれるサラダコーナーも。
健康志向が高まる中国。メニューもオリジナルです。
買収したからこそ実現しました。
CITICキャピタルの本社は香港にあります。
実はCITICキャピタルは 中国政府系のCITICグループの一つです。
CITICグループは中国最大規模の中信証券に
中信重工、さらに中信建設など
中国を支える企業がズラリ。
総資産は100兆円以上をほこります。
そのCITIC 日本の企業にも 的を絞っていました。
かつては飲料メーカーのPOKKAの買収と再建に関わり、
2011年にサッポロHDに売却した実績もあります。
チャンさん曰く、
「日本の企業には 長所がたくさんあります」
「技術面でも とても水準が高くて」
「うまく再建できれば 世界をリードしたり 変えたりしていけるはずです」
日本に流れこむ 巨額の中国マネー
それは「脅威」かそれとも「救世主」か?
次に買収したのは
倒産寸前のアパレル会社。
再建を担うのは
日本を知り尽くした中国人たち。
「日本のファッションリーダーが どんな服を着るか 常にチェックしている」
一方 24年連続の赤字経営の温泉宿
唯一救いの手を差し伸べたのは中国だった。
しかし・・・。
日本を救う!? 中国マネー
今や 世界2位の経済規模を誇る中国
そこから巨額のマネーが日本に入ってきているのは
ご存じでしょうか?
たとえば、
鳴海製陶という洋食器メーカー
高い技術が生む きれいな乳白色と
なめらかな表面が売りで
アジアでは高級ブランドとして知られていました。
しかし、安い食器があふれ窮地に。
そこで現れたのが中国の投資会社でした。
ちょうど中国ではホテルやレストランが拡大し
高級な洋食器が大量に求められていました。
そこで、鳴海製陶を買収して
中国の販路を開拓、
売上を回復させたのです。
そして、Polymatechという日本の企業、
ゴムの部品造りで高い技術を持っています。
ここにも中国マネーが入りました。
今までガラケーで使う部品を使っていました。
しかし、スマホの登場でガラケーは激減。
そこに乗り出してきたのが、やはり中国の投資会社です。
経営陣に若手社員を抜擢し、
工場を中国にまとめてコストダウン
買収から1年で黒字経営に再生させました。
高い技術を持ちながら消えていた日本企業。
それを救ったのが中国の存在でした。
『ガイアの夜明け』今回は 日本に流れこむ中国マネー。
そこには 私たちの知らない
巨大国家 中国の姿がありました。
神奈川 藤沢市の商業施設 テラスモール湘南
午前10時、開店とともに多くの女性客が流れこみます。
真っ先に向かったのは
この日にオープンしたばかりの店 アングリッドです。
国内に29店舗を展開する人気のブランド。
着心地の良さとカジュアルなデザインが
幅広い層の女性たちに支持されています。
手がけているのは、
マーク スタイラーというアパレル企業。
他にもシックなデザインが人気のEMODA.
dazzlinなど可愛さを前面に出したブランドがあたり、
2000年代に急成長しました。
しかし・・・
「我々は緻密さに欠けていた。ビジョンがやや先行しがちだった」
と語る経営戦略本部長。
5年前ブランドを20から32に拡大したところ、大失敗。
30億円の赤字を抱えました。
その結果、CITICキャピタルに身売り。
中国市場での販売に力を入れることになりました。
CITICキャピタルは中国政府系の企業グループです。
国の信用力を背景に 中国で大きな力を持ちます。
そのため 買収した企業を中国に進出させ再建するのです。
マークスタイラーに乗り込んできたのが
CITICキャピタル・パートナーズ・ジャパンの
小林進太郎さん
東大卒業後、世界有数のコンサル会社
マッキンゼーを経てCITICキャピタルに入社。
経営のプロです。
小林さん「事業の優先順位や 課題の整理 そういうことをしていけば 事業の回復は できると思いますし、今後の成長の伸びしろも 十分にあるかなと」
小林さんはブランドを15に整理してムダなコスト削減し
わずか1年で黒字化をさせました。
そして 更なる業績の拡大を狙って
中国で仕掛けていることが。
通販サイトの最大手
中国の「アリババ」が運営するTモール。
厳しい審査を通った
一流ブランドのみが出店出来る場所として知られています。
CITICは そのTモールに2016年、アングリッドを出店。
アングリッドは、中国企業系のCITIC傘下ということで難なく審査をパスしました。
そのTモールでアングリッドは、目標の200%以上を売り上げていました。
中国・上海。
ここに マークスタイラーの中国事業の拠点です。
小林さんの指示を受けて、
次の戦略が動き始めていました。
そこにいる営業副部長のジョ・キャンディさん
中国人の女性です。
完璧な日本語のスキルと
10年間アパレル業界で働いた経験を買われ、
CITICに引き抜かれてきました。
ジョさんは、
マークスタイラーで
クリエイティブディレクター兼モデルの
高園 あずささんのイメージが一番 雰囲気が良くて
中国での受けが良く、確実に数字があがっている
アングリッドの世界観が一番出る。
スタイリングの細かいところがかわいいと
みんな思っていて、そこが大事。
と語ります。
高園さんの画像は中国での注文が伸びるというのです。
好調な通販サイトの売上を一段と加速させる。
ジョさんは その切り札を
高園さんだとにらんでいます。
ジョさんさんがアングリッドの世界観が出ていると
少し古い感じでいい雰囲気のカフェを探してきました。
そこで、高園さんをモデルに商品撮影。
2ヶ月後、東京で売上の結果が出ていました。
マークスタイラー 本社。
ワンピースの販売数は316%
まずは成果が出ていました。
画像を高園さんに変えただけで
販売数が3倍以上に。
CITICの分析と戦略が的中しました。
CITICキャピタル・パートナーズ・ジャパンは
2年間で7つの企業を買収する計画を立てています。
CITICキャピタルのチャン・イーチェン CEO は、
「日本の企業は、技術力や商品の質がとてもいいのに なぜか日本国内の市場しか視野に入れていません。私はたくさんの日本企業と一緒に巨大なこの中国市場を開拓していくことを楽しみにしていますし 今後も 喜んで お役に立ちたいと思っています。」
と語ります。
といった具合で
今回は中国投資会社の参入により
成功した事例を見てきましたが、
中小企業の中国進出というと、
慎重に考えればハードルが高く感じると思います。
こういった中国の投資企業が参入してきたとしても、
万が一失敗し経営が危うくなることを想定すると、
自己防衛的に海外に進出するのは
難しい面もあると思います。