2019年4月9日の午後3時から「カルロス・ゴーン前会長の主張動画」が公開されました。
ゴーン前会長の弁護を担当する弘中惇一郎弁護士は、冒頭で次のように説明しました。
●ビデオは会見中止を懸念し準備したもの
●ビデオを作った時期により、オマーンルートに関する情報については含まれていない。
●ビデオでの実名はカット済
●動画は報道で使用しても可ということをゴーン本人に確認済
日産ゴーン前会長の主張内容
もし、皆さんがこの動画を通じて、私の話をお聞きいただいているとすれば、
それは、私が4月11日に予定していた記者会見を
開くことが出来なかったということになります。
この場で、4月11日にお伝えしたかった私のメッセージのエッセンスを皆さんにお伝えするとともに皆さんが抱いている多くの質問にお答えしたいと思います。
私は無実
最初のメッセージは、私は無実だということです。
これは何も新しいことではありません。
1月に法廷で述べたことを再びお伝えしています。
私にかけられている全ての嫌疑について、私は無実です。
そして、それらの嫌疑に基づいて私に対してなされている避難についてもまた無実無根です。
それらの避難は全て、私を強欲な人物、あるいは独裁的な人物として塗り固めるためにされたものです。
それらは、文脈から切り離されたり、
偏見に基づいて歪められたりものです。
私にかけられている嫌疑についてもお話します。
金融商品取引法、新生銀行との契約、ジュファリ氏に支払った報酬について、私の立場は変わっていません。
108日もの期間を拘束所で過ごしたにもかかわらず、私は常に無実であるという一貫した立場です。
日本を愛し、日産を愛している
私が皆さんにお伝えしたい2つ目のメッセージは、
私は日本を愛し、日産を愛しているということです。
もし愛情や愛着、心からのつながりがなければ、
20年間をその国で過ごしたり、20年間をその会社のリーダーとして務めることなど誰もしないでしょう。
そして、この20年という年月に、非常に多くを成し遂げ、非常に多くの結果を残してきました。
私が1999年に日本に来たのは、打算によるものではありません。
私が1999年に日本に来たのは、この国に魅了され、日産を再生させるという挑戦に心を躍らせたからです。
そして、私が初めて日本にきたときから全てのキャリアを日産のリバイバルプランに捧げてきたことを皆さんよくご存じだと思います。
日産で働く数十万人の勤勉な方々、とりわけ日本の方々のおかげで、私たちは大変な成功を収めることができました。
日本に対する私の愛情、日産に対する私の愛情というものは、私が今経験している厳しい試練を経た後でも少しも変わることはありません。
このことは皆さんに是非知っていただきたいし、信じていただきたい。
日産の仲間たちとともに、日産のために多くのことを行ってきました。それは私の誇りです。
日産の仲間たちとともに、日本経済、そして日本企業の経営のあり方にも貢献してきました。
これらの全てのことは、この数か月を経験した後であっても依然として、私にとって何者にも代えがたい記憶であり、大切な財産です。
先々、皆さんにもきっとお分かりいただけるときが来ると思います。
陰謀
私がお伝えしたい3点目は、いま起きていることが「陰謀」だということです。
これは単に事件ということではありません。
いわれているような「強欲」「独裁」などという話でもありません。
これは、「陰謀」、「謀略」、「中傷」ということです。
なぜか。なぜ、このようなことが起きたのか。
それは、何よりもまず、「恐れ」があったということです。
アライアンスの次のステップ、統合、すなわち合弁に向けて進むということが、ある人たちには確かな脅威を与え、それがゆくゆくは日産の独立性を脅かすもしれないと恐れたのです。
ところが、日産の独立性は、このアライアンスが誕生してから19年間、一度たりとて脅かされたことなどありません。
私はこれまで日産の独立性を最も強力に守ってきました。
将来、「次のステップ」がどのような形に展開したとしても日産の独立性は保ち続けるということを明確にしてきました。
当然、こうした独立性というものは、業績に支えられたものでなければなりません。
独立性を得ること自体が目的となることはありえません。
それが目的化してしまったために生じた「恐れ」です。
日産の業績が振るわず、大きく低下しています。
この2年で3回の業績の修正があり、何度も不祥事(検査問題)がありました。
会社が多くの難題に直面しているからということで問題なのではありません。
起きた問題への対処の仕方が会社の信頼を損なっているのです。
問題が解消されていないにも関わらず、会社として解決したと発言することは信頼を失うのです。
これは会社(日産)の現経営陣に問題があったということです。
これらの人物のことはご存じだと思います。
私が尊敬している日産の従業員の方々について言っているのではありません。
数名の幹部、つまり、明らかに自分たちの利益のため、そして、自分勝手な恐れを抱いたために、会社の価値を毀損している人たちのことを指しています。
それらの名前は皆さんご存じです。
今回の汚い企みを実現させるべく仕掛けた多くの名前を挙げることができます。
真相や事実が明らかになることを願っています。
しかし、結局のところ、この間、私は自分の事件にだけ苦しめられてきたわけではありません。
一体誰が、日産の舵取りしてくれるのか、ブランドを守っているのか、企業価値を守っているのか、株主の利益を守っているのか。
株価の下落と業績の低下を目にしながらも、患部たちは、あれはしないこれはしないと言って、それと同時に、今後何をするのかも言わず、未来のビジョンもなく、日産の業績を向上させるためのビジョンもなく、アライアンスの将来をより強化するためのビジョンもなく、自らを誇っている現経営患部たち。
それを見ることは非常に悲しいことです。
私にとっては本当にうんざりさせられることです。
19年から20年もの年月をかけてこれらとは真逆のこと、つまり、企業価値を創造しブランドを強化してきた人間にとって、今のように頽廃して無頓着になっているのを目にすることは本当に辛いものです。
私は心配です。
明らかに日産の業績が低下していることを心配しています。
さらには、アライアンスを構築するためのビジョンがあるとは思えないので心配しています。
率直に言って、テーブルを囲んでコンセンサスで意志決定をしていくということは、自動車業界ほど競争の激しい産業においては何らのビジョンをも生み出しません。
将来像を見せなければなりません。
これから未来に向けて私たち(日産やアライアンス)の役割は何なのかについて明確にする必要があります。
必要なときにはリーダーシップを発揮しなければいけないのものです。
そして、リーダーシップというものは、会社にとって良いことのために発揮されるものであって、(コンセンサスによる)妥協の産物を目指すものではありません。
これは「独裁」などでなく、「リーダーシップ」なのです。
いかなる会社でも行われていることです。
コンセンサスか独裁か、この2つの選択肢しかないと考えている人は、「リーダーシップ」の本質を理解していません。
アライアンスや日産ほどに複雑かつ巨大な組織のトップだったものとして、これはとても悲しいことです。
さいごに
最後に、私がお伝えしたいのは私の切実な希望です。
私が最も強く望むことは、公正な裁判を受けることです。
私は幸いにして、この訴訟で3人の有能な弁護士に弁護してもらうことが出来ますが、彼らからは裁判の公正性についての安心材料は提供してもらえていません。
私は弁護士ではありません。
私はこの点について詳しくありませんが、今回の裁判において公正性を保証するために必要とされる具体的な条件について、3人の弁護士に説明してもらいます。
この裁判で私の無実を証明したいと切に願っています。
ご清聴ありがとうございました。
より多くの皆さんにお伝えしたり、皆さんの心にある多くの質問にお答えすることが出来なかったことを申し訳なく思います。
しかし、将来、それが叶うことを願っています。
以上、カルロス・ゴーン前会長の主張動画の内容についてのまとめになります。